2011 CAF ネビュラ展
開催要項
主 催: | CAF.N 協会 2011CAF.ネビュラ展実行委員会 |
会 場: | 埼玉県立近代美術館一般展示室(全室) |
会 期: | 開館時間:10:00〜17:00 最終日:15:30まで |
懇親会: | 2011年11月13日(日) 埼玉県立近代美術館レストラン『ペペロネ』(会費制) |
企 画: | ワークショップ(展示会場内) アートメール「とどけよう笑顔!つなげよう心!」(予約不要) ・2011年11月13日(日) |
アーティストトーク(展示会場内) ・2011年11月13日(日) |
|
音楽演奏(展示会場内) 小栗久美子 氏 ートルン(ベトナム竹琴)の演奏ー ・2011年11月13日(日) |
トピックス
朝日新聞に掲載されました。[2011/11/16]
ごあいさつ
2011年、私たちは未曾有の東日本大震災を経験しました。被災され、今なお避難を余儀なくされている多くの方々に改めてお見舞い申し上げるとともに、亡くなられた方々のご冥福をお祈り申し上げます。被災をかろうじて免れた人たちも、自然の猛威と原発事故の脅威に言葉を失い茫然自失の状態に陥りました。このことは、日本、いや同時代に生きている全ての人々の心に大きな重荷を背負わせました。圧倒的な重圧は、私たちのDNAに確実に何かを刻み込んだと思われます。多くのアーティストたちが、自分に何ができるか?何を為すべきか?を問わずにはおられず、身を捩るように辛く苦しい時間を費やしてきたと思います。これだけ情報化の網に覆われ、スピード化を増した現代社会にあって尚、遅々として進まない復興への歩みと、未だに安心な暮らしを手に入れられないことの不条理に苛立ちと怒りさえも覚えて。
このような状況に直面して、アートの意味を改めて考えさせられます。私たちは「何故?」という問いかけを忘れてはならないのだと。いったい何が起こったのか。今、何が起こっているのか。何故、多くの命が犠牲になり、何故、未だ多くの不安と絶望が軽減されないのか。被災された方々が尊い命を賭して私たちに気づかせてくれたものを、風化することのない想いとして刻み、記憶すること。再生と新生の道としてのアートの役割を、私たちは改めて考えなければならないでしょう。
人間の営みを基本に、文化的、政治的成り立ちも抱えた感情の有り様としての作品を通し、考える機会を用意できることがアート本来の意味なのでしょう。CAFネビュラ展は、個々のアーティストの視座を統合し、社会の状況と切り結ぶ場を含みながら、多くのメッセージを発信していきたいと思います。アートの目線が次の新しい世界への眺望と人々の実存の幸福感に繋がることを信じて。
ネビュラの可能性
CAF. NのNはNebula(ネビュラ)の頭文字で星雲の意味、アートの交流が渦巻状に展開されることと、充満したアートのエネルギーが新しい時代に生きる人たちに届くことを願って名付けられました。
CAFは1978年以来、埼玉美術の祭典、第一次CAF、第二次CAF展と呼称を変更しながら、現代美術のコンセプトと表現の問題を社会に問う運動を展開してきましたが、現在これに加え、地域とアートの交流、さらに国際交流の方向性を中軸に位置づけ、活動の密度を高めていこうとしています。
それは、一極集中の進歩発展的思考に見直しがかかり、個人や地域の独自性が求められている現在、アーティストの自由で純粋な思考が、硬直化した地域の現状を打破する糸口を生み出せるかも知れないし、また、海外の異なる文化状況の中で創作された作品に接することによって、新しい時代のパラダイムを探すためのヒントを見付けることができるのでは、と考えるからです。
一人、遠く離れて
ラーシャ・トドシェヴィッチという、セルビアのアーティストがいる。1960年代後半から、旧ユーゴスラヴィアの首都ベオグラードを拠点に、絵画、彫刻、パフォーマンス、そしてヴィデオアートというように、社会主義国家でありながら、独裁的イデオロギーに抗する「自主管理社会主義」という国家体制の中で、驚くべき多感な作品を作り続けてきたアーティストである。
私がこのアーティストを知ったのは、現在ベルリンを拠点に批評活動を続ける、美術評論家であるボヤーナ・ペイジがストックホルムで企画した「After the Wall」という、ベルリンの壁崩壊後10年の、旧共産主義国すべての現代美術の動向を網羅した展覧会においてであった。
その作品群は東ヨーロッパを支配してきた社会主義と共産主義に対する、徹底的な批評精神に貫かれており、その衝撃は少なくとも、今日の資本主義世界のアーティストには微塵も感じることのできないものであった。
彼は私に彼のベオグラードのアトリエへの訪問を歓迎し、大きな手で小さな紙にその住所を書き、手渡してくれた。そして、それから数ヵ月後ではあったが、私は改めて旧ユーゴスラヴィアの現代美術を調査する旅の途上で、彼のアトリエを訪れることになった。
ところが、驚いたことに、旧ユーゴ紛争の傷跡を至るところに残す、ベオグラードの町外れに見つけたそのアトリエ兼アパートは、彼の巨大な作品からは想像もつかない、小さく古いもので、その佇まいはにわかに私を悲しませることになった。しかし、そのアトリエと呼ぶにはあまりに小さな部屋で交わした、彼と妻であるマニエラとの会話を、私はおそらく終生忘れることはないだろう。自由主義への転換後、多くのアーティストが資本主義への盲従を見せ、1960年代からの闘争をいとも簡単に手放し、いわゆる西側のシステムに飲み込まれていく状況に対し、彼はアーティストの使命を改めて痛感し、そして、アーティストは中心から一人、つねに遠く離れていなければならないと言い切ったのだ。
その後、私はかつて勤務していた熊本市現代美術館で開催した「ATTITUDE2007」という国際美術展に彼を招待し、ナチス・ドイツの、あの忌まわしきハーケンクローツを反転させた、彼の代表作のひとつである「卍」形の巨大なテーブルを展示し、熊本市民がそのテーブルを囲んで食事をするというパフォーマンスを行うことになった。それはその国際展に世界各地から招待されたアーティストたちに、忘れかけていたにちがいない、ある種の恐怖にも似た、アートの覚醒の力を思い出させることにもなった。
その彼が今年のベネチア・ビエンナーレのセルビア館の代表作家として選ばれ、私は久しぶりの再会をベネチアで果たすことになった。ベオグラードにあって、資本主義最大にして、最も権威的である国際美術展といっていいベネチア・ビエンナーレを、そして、旧ユーゴからの歴代代表作家の選考を批判し続けてきた彼が、あえてその代表作家としての参加を承諾したことに、いささかの抵抗はあったが、私はそのセルビア館を覆った彼の全身全霊をかけたインスタレーションに圧倒されながら、彼がここで果たそうとした、資本主義であれ、共産主義であれ、イデオロギーに奉仕するアートへの、現在形の徹底した抗戦のありように、改めて震えることになったのである。
思い返せば、私はこうしたアーティストの態度に覚醒され続けてきたというべきかもしれないのだ。政治的行動ではなく、あくまで知覚の深化とその展開の可能性において、そして、一人、権威から遠く離れて、世界のありようを批判し続ける態度。
今回、私が推薦した、奇しくもかつての旧ユーゴスラヴィア、現在のボスニア・ヘルツェゴヴィナ出身のタイダ・ヤシェレヴィッチも、そうした態度を継承するアーティストといっていいだろう。もちろん、彼女は優れたプリントアーティストである。しかし、版画芸術の革新以上に、彼女が版画をメディウムとして、一人、知覚と意識の深化につながる実験を継続してきた人間であるということ。この事実こそが彼女をアーティストと呼ぶ根拠にほかならず、本展において、彼女の存在は大きな役割を果たすことになるにちがいない。
私はこのCAF.N展が、それぞれのアーティストが「一人、遠く離れて」、積み上げてきたものを年に一度、確認し、批評し合う場になることを祈念する。なぜなら、展覧会もまた、アーティストと同様、それ自体、「一人、遠く離れた」存在であり続けなければならないものであるからにほかならない。
展覧会開催の歴史
1978-83 | 埼玉美術の祭典(6回) |
1984-87 | 現代美術の祭典(4回) |
1988 | 現代美術120人展(Pre-CAF) |
1989-91 | Contemporary Art Festival(CAF)(3回) |
1993-2003 | Contemporary Art Festival(CAF)(10回) |
CAF.Nネビュラ協会のプロジェクト
2004.7 | アイスランド、日本現代美術展(アイスランド、ハフナルボルグ美術館)40作家参加 |
2004.11 | CAF.N協会創立展(埼玉県立近代美術館) |
2005.4 | CAF.N京都展(京都、ギャラリーそわか) |
2005〜11 | 2005CAF.ネビュラ展(埼玉県立近代美術館) |
2006・08・10 | 2006CAF.N横浜展(横浜市民ギャラリー) |
2006.4 | 2006CAF.N ミシガン展(ミシガン大学ギャラリー/アメリカ) |
2006〜10 | コンパレゾン2006CAF.Nコーナー(グランパレ、パリ) |
2007.2 | CAF.N銀座展(東京・銀座、ギャラリー風)10作家参加 |
2007.5 | CAF.N松江展(島根県立美術館)39作家参加 |
2007・09 | CAF.N仙台展(せんだいメディアテーク)43作家参加 |
2008.4 | CONTEMPORARY ARTISTS OF JAPAN(ノースアリゾナ大学ギャラリー、USA) |
2008.5 | 2008 CAF.Nラトヴィア展(リーガ国立海外美術館、ラトヴィア) |
2010.11 | 2010 CAF.Nびわこ展(大津市歴史博物館) |
2011.5 | CAF.N金沢展(金沢21世紀美術館) |