2019 CAF.N展 関連企画1

ギャラリートーク

ギャラリートーク

概況

CAFネビュラ展の会期中、展示会場内で行われたアーティストトークは、作者が自作の制作コンセプト、表現様式、技法などをプレゼンする、いわば聴衆の教養に資することを目的とした企画でした。一方、ギャラリートークは、他者で観者の生き様や思考に基づいて発想された、展示作品から受けるイメージを発表し合いながら、作者と観者双方における思考や感動の拡大と深化を目指した企画です。今回のギャラリートークは、長年CAFネビュラ展を見てきた、元埼玉県立近代美術館学芸員で、現在金沢美術工芸大学准教授の渋谷拓氏を迎え行われました。その中で渋谷氏は、壁面に展示された絵画の横にキャプションや解説を掲示するという、美術館の一般的展示スタイルがどうもしっくりこないと述べ、アート表現が多様化した現在、美術館の展示空間もホワイトキューブやオルタナティーブスペースを活用し、壁に依存しない作品の展示を促進すべきではないかという見識を示しました。


 また、愛知トリエンナーレで社会問題化した社会的テーマ性のある作品についても話し合われました。現在、国内の公立美術館の多くが政治的な作品の展示を制限しています。これに対し、作品が実質的な勢力拡大意図をもった政治的勧誘活動などを伴わないのであれば、一般社会において広範な議論がつくりだされていくべきであるという観点から、社会的テーマの作品を排除すべきではないという意見が出されました。
 大坂なおみが全米テニス大会の優勝インタビューで、「あなたが受けとったメッセージは何ですか」と答えたことは、一般社会に対し、そこに潜在している問題を考え始める契機を提供したものであり、アート表現の社会における役割と通ずるものがあります。アートは、例えば人体における血液のように、社会の新陳代謝にとって不可欠な存在だと言えるでしょう。(小野寺優元)



記録

■ 名称=2019 CAFネビュラ展 ギャラリートーク
■ 会期=2019年11月9日(土)
■ 会場=埼玉県立近代美術館 一般展示室
■ 来場者=60名