アーティストトーク | 現代美術展 2010 CAF ネビュラ展

アーティストトーク(2010年11月14日)

アーティストトーク アーティストトーク

アーチスト・トーク担当者:田所一紘

 はじめまして。CAF会員の田所一紘と申します。このたびはお寒い中、アーチスト・トークにお出で下さいまして有難うございます。昨年、一昨年に続き、ギャラリー・トークを、今回も出品されている高浜均さんとともに担当させていただくことになりました。昨年は『驚き』というテーマで100名以上の作家の作品から10点をチョイスして見て参りましたが、今回も私の勝手な視点で作品を読み解いていきたいと思います。

今回のトークのテーマ『 命 』

で行きたいと思います。11日木曜日に初めて今年のCAF展を見させていただきました。第1室の最初の作品から非常に重いテーマの作品が並び、全体として沈鬱なムードが通奏低音のように流れているように感じる展示内容かと思います。生きているのがつらい・・・。この世界の在り方に抗議する。あるいは違う世界に思いを馳せる・・。そんな内容が基調として続き、最後の部屋において招待作家・井上尚己さんの『海内回帰』、すなわち体内回帰願望(生まれる前に帰りたい)で幕を閉じる、といった、今の日本人のマインドを象徴するようなストーリーさえ感じます。
 アーチストはデザイナーと違って、“素直に、露骨に、不器用に、自分自身の心を表現する”ものだと私は思っております。 100名を超える作家の“心の集合体”を目の当たりにして、私は今回の“重さ”をゆるがせに出来ないな、と痛切に感じ、抜粋で申し訳ないのですが、10名の方にインタビューして、“生命とは何か?”、“現代を生きるとは、どういうことか?”、を真正面から答えていただくことにしました。

○ 田所一紘 プロフィール
1962年 東京生まれ
1988年 東京藝術大学油画科大学院修了
  東京展、CAFネビュラ展、日韓展、個展などで活動する。

アーティストトーク

記録

@ 榊 貴美さん 『Fake Dance』
二人づつペアになっているにも関わらず、お互い視線を合わせようとしな い子供たち。不穏な物を手にし、首吊りの縄まで準備されています。“相手を傷つけるか、自分を傷つけるか・・・”、その葛藤の只中にいるのは子供のみならず私達自身なのかもしれません。

A 渡辺武郎さん 『People-10-10』
パソコンで画像処理をされているのでしょうか?背景は銀座の街。少し歪んでいますが、道行く人々は明暗が反転してまるで昼間の幽霊のよう・・・。実体の無い群像は何を暗示しているのか、作者に聞いてみました。

B 高浜 均さん 『 レ 』 
大きなチェック・マークが三つ、踊るように配置され、背後にカラフルな透明 アクリル板がぶらさがっています。 一見しただけでは何のことだかサッパリ分かりませんが、何か“命の 躍動感“を感じます。 高校の美術の先生をされてらっしゃるので、そのあたりも伺います。

C 結城康太朗さん 『gravity』
タイトルを直訳すると“重力”。 結城さんの表現したいことは、自分側と絵画側との引力の関係だそうです。透明色を多用して奥行きを表わしながら、金属を磨いてこちら側に突出   させて見せるような、従来の絵画観を壊す作業を通して“現代”を見てみましょう。

D 清野光男さん 『メタル・レイン』 
金属を使用した重厚な画面は、常に胸に突き刺さるような重いテーマを我々に語りかけてくるようです。 そして今回は祭壇画のようなシンメトリーな構成で、最後の最後で救いといったものを求めているように感じられます。

E 野村直子さん 『ウショロ』 
タイトルは耳慣れない言葉です。いったい何を意味するのでしょうか? 絵  の方も、山だか人物だかよく分かりません。 しかしながらその生命力たるは堂々としていて、今回の全展示作品の中で最も“生きていることを励まされる絵”ではないでしょうか。

F  澁谷有紀さん 『ごんた』 
頭部や尻尾はウサギに見えるけれども二足歩行・・・。これは一体??? 人間のようにも見え、動物のようにも見える、得体の知れない生命体を通して作者は何を訴えかけようとしているのでしょうか?

G 城下万奈さん 『魚の気持ち』 
CAF展の中でも一際明るい画面と内容を感じさせます。今回の作品は植物が芽吹いているような、海の中を自分が泳いでいるような印象です。宮古島でシュノーケルを着けて泳いでいる時の楽しい気持ちを絵にしたのだとか。生きていることに感謝したいと思わせます。

H 小野寺優元さん 『よつめらいぎょ』
雷魚とは、スズキ目・タイワンドジョウ科に属するカムルチーという魚の日本名です。英語ではその形からスネークヘッドと呼ばれることが多いようです。もちろん四つも目はありません。何故ライギョがこちらを睨んでいるのか?そのあたりを伺いました。

I 大橋文男さん 『ルルカ』 
子供の靴が散乱し、映像の中でも公園の遊具が回ったりはねたりしていますが、子供の姿はとうとう見られません。 デコラティブに作られた白いハウスに群がるのは蜂の群れ・・・。 見る人の気持ちは当然淋しさに満たされますが、作者の真意はどこにあるのでしょうか?