2012 CAF ネビュラ展
開催要項
主 催: | CAF.N 協会 2012CAF.ネビュラ展実行委員会 |
会 場: | 埼玉県立近代美術館一般展示室(全室) |
会 期: | 開館時間:10:00〜17:00 最終日:15:30まで |
懇親会: | 2012年11月11日(日)17:30より 埼玉県立近代美術館レストラン『ペペロネ』(会費制) |
企 画: | 講演(美術館2F講堂) 埼玉近代美術館 建畠 哲 氏 ・2012年11月11日(日)15:00〜16:30 |
アーティストトーク(展示会場内) ・2012年11月18日(日)11:30〜13:30 |
|
音楽演奏(展示会場内) 大久保かおり 氏 ーバンドネオンの演奏ー ・2012年11月18日(日)14:00〜15:00 |
ごあいさつ
今年もCAFネビュラ展が11月7日~18日の会期で開催されます。振り返れば、 かつてのCAF(第2次)の活動が10回を区切りとし、新たな構想で「ネビュラ」の名称を冠して今年で早、9 回目を迎えることになります。
その間、各方面から一定の 理解と支持を得、毎年会場に足を運んでいただく常連の鑑賞者の方々や、停滞する経済状況の中でもご理解をいただき協賛を続けてくださる企業の方々のご支援の下、発表や交流を通してアートが繋ぐ様々な関係を築いて来られたと思います。
しかし、そのことだけに満足していてよいとも思えません。アートの持つ側面は社会とコミットしながら積極的に発言をしていく姿勢が求められます。アーティストの眼差しの先に世界を予見する何かを発見できる、そのような展覧会で有り続けるにはどうしたらよいか、私たちは今一度、出品作家一人一人の責任において考えなくてはならないでしょう。CAFネビュラの作家達は、時代の機微に敏感に反応しながらも自己のアイデンティティーに立脚し、それぞれに責任ある制作を続けています。しかし、そんなアーティストの集まりというただそれだけの展覧会で終わらぬよう、自省の精神を失わずに心掛けて参ります。
来年から2~3年間は、これまで会場としてきた埼玉県立近代美術館の改修工事にともない、展覧会の会場を変更することになります。第10回の記念展となる来年は、これまでも企画展として開催経験のある仙台メディアテークを会場に実施する予定です。震災後、彼の地でCAFネビュラ展(本展)を開催できることはそれなりに意味のあることと感じています。アートを通した目線が多くの方々にとっての希望への眺望となるよう、そのような展覧会に是非したいものです。最後になりましたが、2012CA Fネビュラ展に厚いご理解とご賛同いただきました皆様に深い感謝の意を表します。ありがとうございました。
ネビュラの可能性
CAF. NのNはNebula(ネビュラ)の頭文字で星雲の意味、アートの交流が渦巻状に展開されることと、充満したアートのエネルギーが新しい時代に生きる人たちに届くことを願って名付けられました。
CAFは1978年以来、埼玉美術の祭典、第一次CAF、第二次CAF展と呼称を変更しながら、現代美術のコンセプトと表現の問題を社会に問う運動を展開してきましたが、現在これに加え、地域とアートの交流、さらに国際交流の方向性を中軸に位置づけ、活動の密度を高めていこうとしています。
それは、一極集中の進歩発展的思考に見直しがかかり、個人や地域の独自性が求められている現在、アーティストの自由で純粋な思考が、硬直化した地域の現状を打破する糸口を生み出せるかも知れないし、また、海外の異なる文化状況の中で創作された作品に接することによって、新しい時代のパラダイムを探すためのヒントを見付けることができるのでは、と考えるからです。
生身の自分に返る美術
2010年代前半の日本の社会では、落ち着いた気持ちで暮らし、地道な努力によって今後を切り拓いていく生活環境が著しく損なわれている。世界情勢の激変や政治の混乱、経済の低迷に大災害が追い討ちをかけ、人々は、自信をもって生きるお互いの心の拠り所を見いだせず、虚飾の言葉だけが飛び交う。美術においても、安易に商品化して表層的な受けを狙おうとする傾向や、内なる他者の目を持たない独り善がりが目につく。
20世紀後半の日本の美術は、欧米での動向をそのまま受容しながら、第二次世界大戦後の「前衛美術」から「現代美術」へと目まぐるしい変転を繰り返した。しかし、既成の様式を見せかけのものとして解体することが自己目的化した欧米美術の直輸入による急激な展開は、いわば「自らを壊すことそのものの真似による活発さ」ということになる。
もちろん、そこには日本固有の潜在的可能性の発露も垣間見られるのだが、それが大きく花開くまでには至らなかった。その結果、今日の美術は、既成の様式を壊し尽くした更地に寄る辺なく立たされることになる。ところが、形骸化した既成の様式は、実は、今なお生き延びて影響力を保つ。つまり、日本美術の現状は、一見華やかなようでも、表層的で独り善がりな傾向と、形骸化した既成の様式が馴れ合う沈滞状態に陥っている。
さらに、西欧近代において深く浸透した二項対立的な思考方法がいつの間にか私たちを支配し、視覚的表現の正しい理解を著しく妨げている。「主観」と「客観」の二項対立が表現における「内容」と「形式」の二項対立、「抽象」と「具象」の二項対立となって物事を見誤らせる。〈見ること〉と〈見られること〉の二項対立に根差す精神的な「美術」と装飾的な「工芸」の二項対立が視覚的表現の分裂を引き起こす。さらに、「モダニズム」と、それを乗り越えようとする「ポスト・モダン」でさえ二項対立の弊害を免れない(*)。
このような状況を乗り越えるためには、生身の体で群れをなして地球上に暮らす小さな生き物という人類の原点に立ち返って本来の「美術」の在り方を考え直すしかない。また、欧米の美術を存分に参照しながらも、日本社会の深層に横たわる無意識的な文化的遺伝子を掘り起こしてみるしかない。
私が推薦した横田典子の《土人―TSUCHI BITO―》シリーズは、手でつかみ取って塊にした柔らかな陶土を下から上へと少しずつ円環状に積み上げ、崩れそうになると身体で抱きとめて平衡を保つように形を整える作業を繰り返し、その後に焼成するというユニークな方法で制作された等身大か、それに近い高さの立体作品の連作で、見えない重力との関係のもとでの自己の存在を体感させる。
このように有りのままの自分に立ち返りつつ、その自分を離れて見つめようとする一つひとつの地道な試みが、却って本質的な問題提起に結びつくのではないだろうか。私は、自分の身辺に迫る〈ミクロな視点〉と、超遠距離から自分の姿を眺める〈マクロな視点〉の大切さをペーテル・ブリューゲル(父)の絵から学んだ(*)。16世紀ヨーロッパの宗教戦争の大混乱時代を生き抜いた画家が21世紀に投げかけるメッセージに耳を傾けたい。
*拙稿「目と手が育む精神」第一章・第三章(雑誌『思想』7月号・同近刊、岩波書店)参照。
展覧会開催の歴史
1978-83 | 埼玉美術の祭典(6回) |
1984-87 | 現代美術の祭典(4回) |
1988 | 現代美術120人展(Pre-CAF) |
1989-91 | Contemporary Art Festival(CAF)(3回) |
1993-2003 | Contemporary Art Festival(CAF)(10回) |
CAF.Nネビュラ協会のプロジェクト
2004.7 | アイスランド、日本現代美術展(アイスランド、ハフナルボルグ美術館)40作家参加 |
2004.11 | CAF.N協会創立展(埼玉県立近代美術館) |
2005.4 | CAF.N京都展(京都、ギャラリーそわか) |
2005〜11 | CAF.ネビュラ展(埼玉県立近代美術館) |
2006・08・10・12 | CAF.N横浜展(横浜市民ギャラリー) |
2006.4 | 2006CAF.N ミシガン展(ミシガン大学ギャラリー/アメリカ) |
2006〜11 | コンパレゾン展(グランパレ、パリ) |
2007.2 | CAF.N銀座展(東京・銀座、ギャラリー風) |
2007.5 | CAF.N松江展(島根県立美術館) |
2007・09 | CAF.N仙台展(せんだいメディアテーク) |
2008.4 | CONTEMPORARY ARTISTS OF JAPAN(ノースアリゾナ大学ギャラリー、USA) |
2008.5 | 2008 CAF.Nラトヴィア展(リーガ国立海外美術館、ラトヴィア) |
2010.11・12 | 2010 CAF.Nびわこ展(大津市歴史博物館) |
2011.5 | CAF.N金沢展(金沢21世紀美術館) |
2012.8 | CAF.N熊本展(熊本県立美術館) |