現代美術展 特別講演「私の美術についての考え方」

2010 拡大実行委員会 特別講演「私の美術についての考え方」

概況

 これまでの講演が好評につき、総会に引き続き拡大実行委員会でも本会議終了後に時間を設け、「特別講演」を開催しました。
 三回目となる今回はすどう美術館館長 須藤一郎氏にお話を頂きました。すどう美術館は現在小田原市富水に3年前に移転され、富士山を望む自然豊かな環境を本拠地に油絵画家の菅創吉をはじめとした現代美術作家の多数のコレクション展示や企画展示、若手作家の発掘・支援を目的とした公募展も行っています。また、海外アートフェアへの出展や、美術館内のみならず「出前美術館」として地方のギャラリーや障害者施設や老人ホームなどの福祉施設、小学校などでもコレクションを展示するなど精力的な美術の普及活動をされています。
 一企業者であった須藤氏がふとしたきっかけで菅創吉作品と出会い、その感動と購入の決断をきっかけにしてコレクターとして歩み始め、次第に「自分だけでなく多くの方々に美術作品に触れて貰いたい」という考えの元に、平成2年、当時の町田市の自宅を解放して「すどう美術館」としてスタートしました。「日曜美術館」に取り上げられた直後には驚異的な来場者数を得るなど通称「世界一小さい美術館」としての活動が徐々に周知され、8年後に銀座に拠点を移し若手にも発表の場を作るなど10年間活動されました。そして現在は小田原市にて新たな観点から活動されています。講演テーマを各章に順序立てて頂き、「私と美術の関わり」では菅創吉と森繁久彌との交流のエピソードを交えての美術館誕生の経緯、主テーマの「私の美術の考え方」では須藤氏の考える「いい絵」の定義、美術の見方と楽しみ方、作家の作品を作る姿勢、美術と人間との関係など、時には「作品自体も大切だが、そもそも作家自身が作品でなければならない」という作家の立場からは身の引き締まる提言も込められました。後半は「欧米の美術事情」としてイタリアのキャソリア国際現代美術館に作品を寄贈されたことやスペインやドイツなどの状況を、「美術活動で得たもの」のテーマでは活動の原点や社会貢献の意義を伺いました。最後に収集の理念として、現代の空間に合いながら一過性の流行を追ったものではなく「永続性」のあるものを基準にしているという言葉が印象的でした。時間一杯の講演になり残念ながら質問の時間の割愛を余儀なくされましたが、講演後の須藤氏を囲んでの懇親会も盛況でした。こうした講演の企画を通じて更に会合の意義が高まり、今後に繋がればと考えます。

記録

■ 名称=拡大実行委員会
■ 講演名=私の美術についての考え方
■ 講師=すどう美術館館長 須藤一郎氏
■ 開催日=2010年9月23日


すどう美術館,須藤一郎氏