2017 CAF ネビュラ展
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2017CAFネビュラ展開催要項
会期 | |
会場 | 埼玉県立近代美術館 一般展示室 全室 (JR北浦和駅西口より徒歩3分) |
企画 | 1. ワークショップ 両日共13:30〜15:00 ワークショップのチラシ(1.2mb)印刷 > |
2. アーティストトーク 展示会場で、作家自身が自分の作品について語ります。 |
CAF.N への期待
CAF. N は不思議といえば不思議な展覧会である。いや本来なら正統的であってよいはずのものが、日本の美術の状況にあってはかえって例外的に見えてしまうというべきかもしれない。いわゆる公募団体展がよくも悪くも師弟関係的なものを内包している、つまり強固なピラミッド型の構造によって組織としての求心力と持続力を維持しているのに対し、CAF. N はそうした階層的秩序とは無縁である。公募団体はいずれも次の時代を切り開こうという革新の意欲に燃えて出発したはずだが、その多くはいつの間にか、組織の存続自体を自己目的とするようになってしまっているのだ。私たちがCAF. N に期待するのはそうした継承の論理ではなく、もっと自由で開放的な雰囲気を宿した組織である。
その点でもCAF. N の展覧会名にネビュラ(星雲)という言葉が付されていることは重要な意味を持っているに違いない。人的なしがらみや硬直したヒエラルキーに拘束されることのない組織、まさに渦巻状に運行している壮大な星雲のように、外部の動向を巻き込み、また新たな才能をも積極的に取り、開かれた運動体であろうという意志の表明であると思われるからである。
周知のように今年は5 年に1回のカッセル市(ドイツ)のドクメンタと2 年に1回のベネチア・ビエンナーレという、現代美術の壮大なイベントが時期を重ねて開催される年であり、私も先ごろ、時間を遣り繰りして見て回ってきた。どちらもざっと目にするだけでも3日はかかるような広大な会場だが、今回の両者はまったく対照的な内容のものであった。ドクメンタの方は今日の世界が
抱える政治的、社会的なシリアスな問題をテーマとした作品を徹底して取り上げ、ベネチアは<芸術万歳>を標語にして一種の祝祭感を盛り上げようとしていたのである。考えようによっては今の社会がアートに期待している対極的な二つの方向であるといえるかもしれない。しかし私にはどちらに対してもかなりの違和感を覚えざるを得なかったのだ。
ドクメンタはたしかに重い問題を考えさせられる展示ではあったが、そうした膨大な作品を集積させることでいったい何を言いたいのか、そこに示されているのが現実の状況であるならば、企画者はそれらに対してどのようなメッセージを有しているのかが見えなかったのである。あえて苦言を呈するなら、事実の重さを展覧会のインパクトに転用しているだけのように思われたのだ。ベネチアの方は、金獅子賞を受賞したドイツ館や大運河沿いに設置された物故作家のジェームス・リー・バイヤースの巨大な金色の塔など見るべき作品はあったが、ドクメンタとは逆に、全体としてはさらさらと見終えてしまうインパクトの希薄な会場であった。
途方もない規模のこの両者とCAF. Nとを比較するわけにはいくまいが、ともあれ CAF . N は直接的な政治性や社会性を帯びた主張や大掛かりな祝祭性とはかかわりのない展覧会であって、メンバーを固定しない明るく自由な気風の中で、それぞれの個性的な世界が自
在に展開されている。その多様性に富んだ会場に、正直なところほっとした安らぎを覚えるのである。このようなチャーミングな展覧会が、文字通りゆったりと運行する開かれた Nebula=星雲として、私たちの前で輝き続けてくれることを期待したい。
30数年にわたるつき合い- CAF.N が求めるもの& CAF.N に求めるもの
埼玉県の高校教員に就職して3 年目の1 9 8 3 年1 1月、第6回埼玉美術の祭典(現 CAF. N)コンクール部門に応募し優秀賞を受賞した。審査は公開で行われ、審査員には当時バリバリの美術評論家であった瀬木慎一、林紀一郎、ヨシダヨシエ氏らがいた。
私はその受賞の知らせを修学旅行引率先の京都で聞き、その帰路、東京駅に着くと、そのまま前年開設された埼玉県立近代美術館での授賞式に向かった。それが3 0 数年にわたる現 CAF. N 協会との長い付き合いの始まりだった。
その後、組織はより全国的な体制へと発展し「現代美術の祭典」と名称を変えた。私自身はそのスタッフメンバーとして出品を続け、1 9 8 7 年には、1 0 周年記念誌の編集発行に携わった。
リーダー(その後協会事務局長)の小野寺優元氏と、コンクールを通して集まった同年代の若手作家とともにあたる編集作業は、この新しい美術運動への参加が、まだ何者でもない私たちを後押しし、また未来を祝福しているような幸福な時間を与えてくれた。
1 9 8 9 年には名称をC・A・Fと変更し、この活動の第3 期に入った。作家主体の自主企画展は必ずマンネリ化するか崩壊する。そうならないため、同じメンバーで同じことを繰り返さないこと、また公募団体のようなヒエラルキーを持った制度にしないことがこの団体設立の理念であり、それは必然的な脱皮だった。
方法論として、参加者を固定せず毎年入れ替える、1 0 年で解散する、シンポジウムを通して社会にこの運動を発信することなどの改革案が挙がった。
公募展、コンクール、個展、グループ展等それぞれの発表形態が花開き、その中で作家が競い合っていた時代だった。各作家は自分の作品の評価を得るために、個々の個性に基づくスタイルや世界観を必死にアピールしていたが、それゆえにその過熱化した争いは、技術や素材の過度の主張となり、果ては新奇性や小さな差異を求めるようになった。そして評価を得たスタイルに固執する現象も見られた。私もいろいろな展覧会にちょこちょこ手を出してはいたが、それらはエネルギーに満ちたものでもあった反面、ある種の不毛さも漂わせていた。
その中で、CAF は1年に一度帰るべき場所だったような気がする。ここだけは戦いの場ではなく、自分にとっての価値観をそのまま素直に提示できる場だった。創作活動本来の自己目的性をそのまま展覧会の価値体系にしている稀有な団体だったのだ。
2 0 0 4 年に1 0 年間の C・A・F の活動を締めくくり、CAF. N(ネビュラ)に組織改編した。
「ネビュラ(Nebula)」とは「アートの交流を渦巻き状に展開する」という理念による命名だった。その理念の下、私自身2007年に「CAF. N 松江展」を開催した。その際には、狭いセクトに捕らわれず表現の現代性と多様性で人選することを基盤にし、この地域に現代美術の在り様を示すことや、美術家同士や地域との交流などを求めて企画運営した。それは一応はできたとは思うが、地方展の開催にはいくつか疑問が残った。
それとは別にこの団体が目指すものは、表現の現代性-同時代としての現代美術足りえているか-を問うこと、つまり美術の動向に対する開かれた目を持つ姿勢なのだと思う。それが、内部の評価を得ることに気を配るような公募団体の閉じられたシステムとの相違点である。
それは芸術や娯楽の相互浸透や統合が行われているこの時代にあって、自らの制作メディアとスタイルが、他のあらゆる表現形式の中で、なお「世界と人間」を表すのに足る力を持ち得るかを問うことである。美術が現代において、I T 機器や他の形式では到達し得ない世界の様相や、人間の心の不可知な部分への浸透を可能にさせる優れた形式であることを、証明して見せなければならない。
美術という形式の価値を、個々の作家が表現の中で証明しつつ集うことが現在の CAF. N の使命であると考える。またそれが自分自身の存在証明でもあると思っている。
ネビュラの可能性
CAF.NのNはNebula(ネビュラ)の頭文字で星雲の意味、アートの交流が渦巻状に展開されることと、充満したアートのエネルギーが新しい時代に生きる人たちに届くことを願って名付けられました。
CAFは1978年以来、埼玉美術の祭典、第一次CAF、第二次CAF展と呼称を変更しながら、現代美術のコンセプトと表現の問題を社会に問う運動を展開してきましたが、現在これに加え、地域とアートの交流、さらに国際交流の方向性を中軸に位置づけ、活動の密度を高めていこうとしています。
それは、一極集中の進歩発展的思考に見直しがかかり、個人や地域の独自性が求められている現在、アーティストの自由で純粋な思考が、硬直化した地域の現状を打破する糸口を生み出せるかも知れないし、また、海外の異なる文化状況の中で創作された作品に接することによって、新しい時代のパラダイムを探すためのヒントを見付けることができるのでは、と考えるからです。
展覧会開催の歴史
1978-83 | 埼玉美術の祭典(6回) |
1984-87 | 現代美術の祭典(4回) |
1988 | 現代美術120人展(Pre-CAF) |
1989-91 | Contemporary Art Festival(第一次 CAF)(3回) |
1993-2003 | Contemporary Art Festival(第二次 CAF)(10回) |
CAF ネビュラ協会のプロジェクト
2004~現在 | CAF.Nebula展(埼玉県立近代美術館、2013、'14 せんだいメディアテーク) |
2004.7 | アイスランド、日本現代美術展(アイスランド、ハフナルボルグ美術館) |
2005.4 | CAF.N京都展(京都、ギャラリーそわか) |
2006.08/10/12 | CAF.N横浜展(横浜市民ギャラリー) |
2006.4 | 2006CAF.N ミシガン展(ミシガン大学ギャラリー) |
2006〜13 | コンパレゾン展(グランパレ、パリ) |
2007.2 | CAF.N銀座展(東京・銀座、ギャラリー風) |
2007.5 | CAF.N松江展(島根県立美術館) |
2007.09 | CAF.N仙台展(せんだいメディアテーク) |
2008.4 | CONTEMPORARY ARTISTS OF JAPAN(ノースアリゾナ大学ギャラリー、USA) |
2008.5 | 2008 CAF.Nラトヴィア展(リーガ国立海外美術館、ラトヴィア) |
2010~2017 | CAF.Nびわこ展(大津市歴史博物館) |
2011.5、2017.6 | CAF.N金沢展(金沢21世紀美術館) |
2012.8 | CAF.N熊本展(熊本県立美術館) |
2014.7 | CAF.N渋川展(渋川市美術館) |